うるし(漆)とは、漆の木から採取した樹液です。 塗料や接着剤、防水剤として利用したのが始まりです。 塗膜が堅牢で熱や湿度に強く、酸やアルカリにも変化しないという特徴があります。
漆
漆の木は、日本をはじめ、朝鮮、中国、台湾などの東アジアや、タイ、ミャンマー、ベトナムなどの東南アジアに自生しています。漆の木の幹を傷つけると、その傷口を埋めようとして乳白色の樹液が出ます。この樹液を掻き集めて精製したのが漆です。漆は、樹齢10年以上の漆の木から掻き取られますが、1本の木から1年間で200g程度しか採取できません。 漆は、塗料や接着剤、防水剤として利用したのが始まりです。塗膜が堅牢で熱や湿度に強く、酸やアルカリにも変化しないという特徴があります。 採取した漆から木屑等を取り除いた生漆(きうるし)を攪拌して成分を均質にする「なやし」、加熱して水分を蒸発させる「くろめ」の作業を行うと、半透明の飴色で粘度のある精製漆になります。精製漆に鉄粉を加えると黒漆、顔料を加えて色をつけると色漆になります。漆の乾燥
液状の漆を固化させることを「漆を乾かす」といいますが、漆の乾燥は、水分が蒸発するのではなく、漆液中に含まれる酵素の酸化作用によって固化するものです。このため、漆の乾燥には適度な温度(25 ℃前後)と湿度(75% 前後)が必要で、梅雨の高温多湿な時季ほど早く乾燥します。漆風呂は、檜や杉の板を貼って防塵、保温、保湿の効果を高める密閉構造になっており、漆の乾燥に最適な温度・湿度が保たれるようになっています。漆器
漆は堅牢性に加えて独特の質感や光沢を備えており、その特有の美しさが古くから日本人の美意識に合致し、多くの漆器が生み出されてきました。漆器は、素地を作る素地工程、素地を整える下地工程、下地に漆を塗り重ねる塗りエ程、漆面に文様をつける加飾工程という長く手間をかけた工程を経て完成します。素地
漆器の素地を器胎ともいいます。 漆器は器胎の素材によってさまざまな呼ばれ方をし、木を素地にしたものは木胎、竹は籃胎、布は乾漆、紙は紙胎、皮は漆皮、金属は金胎、陶器は陶胎などと呼ばれます。 籃胎は、表皮を取り除いた無節部分の竹ひごを蓋と身の木型に沿って網代に編んで素地をつくる漆器で、漆を塗る際に編み目を塗りつぶした上に加飾を施す方法は、香川独自の素地制作の技法です。 また、麻布を漆で貼り重ねて作る技法(乾漆)もあります。 漆器とは、木・竹・紙などの素地に漆を塗料・接着剤・防水剤として用いて製作する東洋独特の工芸品です。 漆器は、器胎を成形する素地工程、素地を整える下地工程、下地に漆を塗り重ねる塗りエ程、漆面に色漆や金粉などで文様をつける加飾工程を経て完成します。加飾
加飾にはさまざまな技法があり、漆で描いた文様が乾かないうちに金粉などを蒔いて装飾する蒔絵、平板に加工した貝殻を文様の形に切って漆面に貼る螺鈿などが代表的なものです。香川には、蒟醤、存清、彫漆という香川独自の技法があります。 香川の三技法 →詳しい説明は、9ページ 彫りと色漆による加飾に特徴があります。-
蒟醤(きんま)
竹や木などで作った素地の上に漆を塗り重ねて、剣で文様を影り、影った溝に色漆を埋め、最後に平に研いで意図する文様を表します。 -
存清(ぞんせい)
漆を塗り重ねた器物の表面に色漆で文様を描き輪郭や細部に剣で線彫りを施し、金粉などを理めて文様を引き立てます。色漆を埋め込む技法もあります。 -
彫漆(ちょうしつ)
色漆を数十回以上塗り重ねて(100回で約3mm)いくつもの色漆の層を作り、その層を掘り下げることで文様を浮き彫りにします。
漆器の産地
江戸時代にさ藩の産業奨励策によって各地に特色あるし漆工芸が発達し、これがこれが今日の漆器の産地につながっています。11月13日は「うるしの日」
平安時代前期、惟喬か(これたか)親王が、京都嵐山法輪寺に参籠し、満願の日に虚空蔵菩薩から漆の製法と漆塗りの技法を伝授されたと伝わる11月13日は「うるしの日」とされています。 日本人と漆の関わりは縄文時代にさかのぼります。 時代とともに技術も発展し、明治時代には日本の代表的な輸出品となるなど、漆器・漆芸品は日本を代表する伝統文化のひとつに数えられています。出典:香川漆芸、香川県漆芸研究所、2022年1月、p 1 – 2